1.理念及び目的

 名城大学薬学部医薬情報センターは、医薬情報管理を行うことによって、医薬品の有効性・安全性を確保し、医薬学の振興に寄与すると共に医療に貢献することを理念とし、学内外に対し医薬情報管理活動を行うと共に、医薬品の副作用に関する独自の研究を行い、本薬学部学生・大学院生等に対し医薬情報管理についての教育を行うことを目的にしている。


2.沿革

 医薬情報センターは、1979年に医薬研究施設として発足し、1986年に薬学部附属施設医薬情報センターとして正式に大学の施設となった。


3.医薬情報管理

 医薬情報センターは、1979年に医薬研究施設として発足し、1986年に薬学部附属施設医薬情報センターとして正式に大学の施設となった。


1)医薬情報管理業務


 薬学者、薬剤師に現在求められている医薬情報管理とは、医薬品についての多領域における情報を統合させる科学である。この活動を行うには、医薬情報に関する資料・設備を多角的に備えるのみならず、情報の収集、分析、加工、蓄積、検索、評価、提供に関する知識・技術が要求される。特に、医薬情報使用の目的は医療行為に直結するものであるため、その要求は大変厳しいものである。そのような理解の元、当センターでは、業務の一環として医療従事者、研究者、大学院学生、薬学専攻科生、学部学生等からの、各種問い合わせ依頼に対応している。


2)医薬情報に関する研究


(1)副作用、薬物相互作用等の発現は個人背景によって大きく影響される。これまでに報告されている薬物の物理化学的情報、個人が持つ薬物動態パラメータや薬物代謝能等の科学データに基づき、adverse reaction発生を未然に回避できる支援システムを構築する。
(2)データベースの作成・研究
 医薬情報管理による医薬品の安全性の確保をめざして、副作用と中毒に関する症例報告の独自のデータベース(CARPIS:Case reports of Adverse Reaction and Poisoning Information Services)の作成及び研究を行っている。本データベースは、国内で報告された副作用と中毒に関する症例報告を収集し,独自のデータベースとしたものである。1987年より作成を開始し、現在約20,000症例を収録している。原因となった薬の般名や商品名はもちろんのこと、副作用の症状や原疾患などからすぐに該当論文を検索し、参照することができる。 現在、本データベースの薬剤疫学への応用を進めるとともに、インターネットへの情報公開を行っている。
(3)患者の自覚症状(訴え)及び患者背景の評価点を用いた医薬品副作用の推測
 薬剤師法及び医療法の改正により、患者への医薬品情報提供は薬剤師の当然の業務として認識されつつある。しかし、情報提供する事がだけが業務の目的ではなく、情報提供を通した患者との対話から薬物治療や副作用のモニタリングを行い、医薬品の適正使用に寄与することが目的であると考える。そこで、副作用と中毒の症例報告データベース(CARPIS)を用い、副作用と患者の自覚症状、検査値異常及び患者背景の関連を調査し、評価点をつけて患者の自覚症状から副作用を早期に発見する手法を確立することを目的として研究を行っている。


3)医薬情報教育


(1)3年生に対する講義
 医薬品情報とは「医薬品に関わる人間の行動において、その意志決定をするための根拠」と定義できる。患者が、「薬を服用する」「薬を服用しない」という意志決定をする時、医師が「この患者にこの薬を使おう」「この薬はもう止めよう」という意志決定をする時も必ずなんらかの「医薬品情報」が存在し、その意志の決定根拠となっているはずである。この意志決定の根拠となる「医薬品情報」が間違ったものであれば、患者も医師もその行動を誤ることになる。正しい意志決定をするための適正な医薬品情報をいかに管理し、その情報の内容が医薬品の適用の際、いかなる意味を持つものであるかの理解の上で個に応用し、その結果を評価し、新たな情報を創造していくかが医薬品情報学である。そのための基本となる知識、技術について解説している。

(2)3年生に対する実習
 本実習では、1つの医薬品が基礎から臨床開発されるまでにいかに多くの情報が発生するかを認識し、医薬情報の発生源、発生過程、情報の種類を知ると共に、医薬情報の収集、検索、得た情報の評価、医療従事者や患者に対する情報提供の知識・技術のアウトラインを習得すると共に新たな情報を創造する能力の育成を目的としている。基礎情報検索として、実物の錠剤の識別、添付文書、インタビューフォーム、医薬品集(国内、海外)、保険薬事典、長期投与医薬品便覧、厚生省医薬品安全情報、治験薬情報等)による医薬品情報の検索を行い、得た情報を評価して、問題を解答させている。応用情報検索としては、疑義照会、相互作用、副作用、服薬指導等の問題を含んだ処方箋及び模擬カルテ(模擬薬歴)を用意し、処方及び患者の問題点について考えさせ、服薬指導の実践を行っている。

  (3)大学院、生涯教育
 医薬情報は、日々更新されるものであり、生涯学習が非常に大切である。そこで、厚生省の薬剤師生涯教育推進事業における薬剤師実習研修の研修指定施設として、実習研修を引き受けている。また、個々の病院、薬剤師会等からの実習研修・見学及び勉強会の依頼にも応じている。


4.施設・設備

 薬学部3号館1階に位置し、総床面積は約165㎡である。実習・研修スペースとして、コンピュータルームを併設している。
 主な情報資料としては、書籍約3,000冊、雑誌約50誌、二次資料(含CD-ROM)15種類を有している。コンピュータは、一斉教育用としてコンピュータルームにデスクトップ42台、311番教室にノート型80台を有し、医薬情報センター内には、学生が常時自由に利用できるデスクトップ16台も整備している。